
菊地 利奈さん(とまこまいStyle!!主催/益子焼専門店「Re:Happy+Utsuwa」)
お気に入りの器を探す時間。作り手と会話を交わしながら、手仕事の魅力に触れるひととき。苫小牧にそんな出会いの場をつくってきたのが、益子焼専門店「Re:Happy+Utsuwa」を営み、ハンドメイド雑貨イベント「とまこまいStyle!!」を主催する菊地利奈さんです。
2013年にお店を開き、2016年にはイベントをスタート。自分の「好き」を出発点に、店とイベントの両方を育ててきました。その歩みを支えているのは、どんな思いなのでしょうか。益子焼との出会いから、出店者への責任、仲間とのつながり、そして苫小牧で暮らす心地よさまで、お話を伺いました。
1. 雷に打たれたような出会い――「好き」が専門店になるまで
――最初はハンドメイドのお店として始められたそうですね。お店を開いたきっかけを教えてください。
菊地:昔から、人と同じものよりも、手作りのものが好きだったんです。ハンドメイドなら、好きな形やサイズ、好きな生地で作ってもらえる。そのオリジナリティーがすごくいいなと思って。手作りの魅力に出会って、「お店をやろう」と思ったのが始まりです。
――そこから、益子焼の専門店へと変わったのはなぜでしょうか。
菊地:姉が茨城に住んでいて、姉のところから益子までは1時間くらいで行けるんです。連れていってもらったときに、その町と器に、雷に打たれたような感じでひかれました。もともと料理も器も好きだったんですけど、益子焼は本当に飽きないんですよ。デザインもいろいろで、並んでいるものが全部違う。それが自分の「好き」と合っているんだと思います。
お店では当初から益子焼を扱っていましたが、2018年に専門店へ。ハンドメイドのお店が増える中、自分の好きなものをより深く扱い、お店の個性を出していきたいという思いもあったといいます。
――器は、現地で買い付けているんですか。
菊地:年に4回くらい現地に行って、直接窯を訪ね、作家さんとやり取りをして仕入れています。
今では週末や連休には、道内のいろいろなところから来てくださるんです。「ここだけのために来ました」と言ってくださる方もいて。来られない方には、InstagramのDMで器のサイズなどをお伝えして、発送もしています。

2. 苫小牧でもやってみたら?――個人主催に込める思い
――「とまこまいStyle!!」を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
菊地:私はもともと苫小牧出身ではないんですが、こちらに来たとき、大きなイベントは限られているなと感じていました。お店を始めたころ、大きなハンドメイドイベントは道内のほかのまちでは開かれていたんですけど、苫小牧にはなかったんです。
そういうイベントの主催者さんたちとつながりができて、「苫小牧でもやってみたら」と声をかけていただいたことが、やってみようかなと思った始まりでした。
――個人で主催することにも、こだわりがあるそうですね。
菊地:昔からあるお祭りには、変わらない良さもあると思います。その中で、私はずっと個人主催にしているんです。個人でも、こうして大きなイベントができる。ほかの人が何かを始めるきっかけにもなれたらと思っています。
2016年に始まった「とまこまいStyle!!」。2026年は開催を年4回へと増やし、季節ごとの手仕事に出会える機会を広げています。
菊地:同じ作家さんでも、季節によって素材や作品を変えている方が多いんです。季節ごとに選考しながら、夏に入れなかった方は秋に、というように、年間を通して出店できる機会をつくれたらいいなと思っています。
3. 出店者に選ばれるイベントであるために
――イベントを続ける上で、特に大切にしていることは何ですか。
菊地:集客は一番大切にしています。出店者さんには、お金を払ってブースを借り、販売していただいているので。作家さん自身のファンや集客する力ももちろん必要ですが、イベント自体がお客さんを呼び、買い物をしてもらわないと、次の出店につながらないんです。
今はイベントも増えて、出店者さんが選ぶ時代です。その中で、スタイルを選んでもらわなければいけない。だから、常に出店者目線でいることを意識しています。
――主催者だけでなく、出店者の皆さんとも一緒につくっていくんですね。
菊地:出店者さんにも、主催する側と同じ思いで、お客さんを呼んでもらいたいんです。一人ひとりに広告塔になっていただく。今は本当にSNSを見て来てくださる方が多いので。
来場者から届く「続けてほしい」という声に加え、「自分も出てみたいけれど、どうしたら出られますか」という相談もあるそうです。買い物を楽しむ場であり、手仕事をする人が次の一歩を考える場にもなっています。
――準備も大変だと思いますが、続ける力はどこから生まれるのでしょうか。
菊地:楽しみにしてくれている人がいる。それが一番ですね。来てくださるお客さんもそうですし、出店者さんも「スタイル、楽しかったです」と言ってくれる。準備は毎回、半年前から始まるので、もう生活のリズムに組み込まれている感じです。
4. 「自分だけでは絶対できない」――歩みを支える仲間たち

――運営を支えるスタッフの皆さんとは、長いお付き合いなのでしょうか。
菊地:ありがたいことに、長く一緒にやってくれている人が多いんです。女性スタッフは、ほとんどが2016年の立ち上げからのメンバー。いろいろな苦労も全部知っています。
これまでには、コロナ禍による開催中止や、会場が選挙の開票所になることでの調整も経験しました。選挙と重なったときには、終了を1時間早めて開催。感染対策をしながらの再開にも、難しさがあったと振り返ります。
菊地:会場のシート敷きなども、声をかけると手伝ってくださる方がいる。本当に、人に恵まれているんです。とにかく、人は大事にしています。人がいないと、自分だけでは絶対にできないので。今いる人たちを、大事に、大事にしています。
5. 暮らしも商売も、苫小牧は「ちょうどいい」
――室蘭出身の菊地さんから見て、苫小牧はどんなまちですか。
菊地:仕事と結婚をきっかけに苫小牧に来ました。室蘭も大好きなんですが、暮らしてみると、苫小牧はすごく住みやすいなと思います。自然の環境もそうですし、雪が少ないことや、空港が近いことも。子育てでも、「この学校でよかった」「この部活に入れてよかった」と思うことが多かったんです。
何でも、いい意味でちょうどいいんですよね。商売をしていても、札幌で同じやり方をしていたら、ここまでにはなっていなかった気がします。心地よくて、いろいろなことがちょうどいい。
道内各地からお店を目指して訪れる人がいて、イベントには作り手とお客さんが集まる。菊地さんにとって苫小牧は、暮らしの場であると同時に、自分の好きなことを育てていけるまちでもあるようです。
6. 続けながら変わる――いつも「初心スイッチ」を入れて
――これから、お店や「とまこまいStyle!!」をどうしていきたいですか。
菊地:ずっと同じことをするのは、あまり好きではないんです。お店なら、新しいサービスを始めるとか、新しい見せ方をするとか。自分が飽きてしまうなら、お客さんも同じではないかなと思うので、常に考えています。
スタイルも、出店者さんを集めて「開催しました」ということを繰り返すだけでは、あまり魅力を感じなくて。続けながらも、ちゃんと変化していくことが大事だと思っています。
慣れてしまわないように、「今回はどうする?」「新しいことをしよう」と、いつも「初心スイッチ」を入れて考えています。
【最後に】
一つひとつ異なる器を選ぶことも、季節ごとに表情を変えるイベントをつくることも。その根には、自分の「好き」を大切にしながら、人との出会いを重ねていく菊地さんの姿勢があります。
作り手一人ひとりの手仕事やこだわりを受け止め、その魅力を発表し、届けられる場をつくり続ける。菊地さんの歩みには、そんな「クラフトパーソンシップ」が息づいています。
手仕事との出会いが、まちに出かける楽しみになり、新しく挑戦する人の一歩を後押しする。その積み重ねは、地域の賑わいとともに、「このまちにこんな文化がある」という市民の誇りを育む力にもなるはずです。続けながら変わり、仲間を大切にしながら、菊地さんは今日も苫小牧に出会いの場をつくっています。
菊地さんのお話は、FMとまこまい「トマコマイシップRADIO」でも放送されました。(毎週金曜日午後14時30分〜)
Spotifyでもアーカイブ配信をしていますので、ぜひお聴きくださいね!
とまこまいStyle!!公式サイト|「トマコマイシップな人々」シリーズの記事はこちら

