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【トマコマイシップな人々】「まず自分が楽しむこと」――苫小牧の未来を面白くする、仕掛け人のヒント

永井 孝佳 氏(一般社団法人苫小牧観光協会 )

【はじめに】「綺麗な言葉」の前に、現場の熱量があるか

「とまこまいコスプレフェスタ」や「TOMAKOMAI MIRAI FEST(トマコマイ ミライ フェスト)」――。近年、北海道苫小牧市では、地域や従来の観光の枠組みを大きく超えた、全国から注目を集めるビッグイベントが次々と誕生しています。

これらの仕掛け人であり、また地域で長年にわたり「演劇集団『群’73』」の演出として文化芸術の現場を支え続けてきたのが、永井孝佳(ながい・ゆきよし)さんです。

「地域活性化」「街のため」という言葉の裏で、永井さんはどのようにして多様な人々を巻き込み、本物の熱量を生み出してきたのか。試行錯誤の歩みと、イベントづくり・地域づくりの真理に迫るロングインタビューをお届けします。

1. 原点は「自分が楽しむこと」――利益や計算を超えた先に貫ける美学

――コスプレフェスタやミライフェストなど、街を巻き込む大型イベントを立ち上げ、成功させてきた永井さんですが、イベントを手掛ける上で最も大切にしている軸は何ですか?

永井: すごくシンプルなことなんです。「自分が楽しめなかったら、イベントじゃない」――昔から周りにもずっと言っているんですが、本当にこれに尽きますね。「地元のため」「苫小牧市のため」という目的はもちろん大前提としてありますが、形だけの綺麗な言葉を一番掲げたいわけではないんです。そこに終始してしまうと、結果としてコンテンツとしての内容が薄くなってしまう。まずは企画する自分自身が楽しみたくてやっている、本気でワクワクしたい。その純粋な情熱こそが、一番自然で強い熱量を生むと思っています。

――永井さんはかねてより「関わる一人ひとりが当事者(プレイヤー)になること」の大切さを語られています。その哲学はどこから来ているのでしょうか?

永井: 行政や事業者が連携して動くとき、それぞれ立場や役割が異なるからこそ、全員が同じ温度感を持つのは簡単ではありません。だからこそ、行政のサポートに頼り切るのではなく、私たちがきちんと「自立したプレイヤー」として足元を固めることが大切なんです。

私がこの姿勢を貫けるのは、この取り組みを自身のビジネスや利益追求の手段にしていないからでもあります。「これで儲けよう」「事業として成り立たせよう」という計算が先行してしまうと、イベントが本来持っていた熱量や純粋な面白さが薄れてしまう。利害関係から離れて「本気で面白い空間を作りたい」という想いを最優先に動いているからこそ、妥協のない空間作りができますし、行政の担当者さんも市民の皆さんも信頼して対等に伴走してくれるのだと感じています。

2. 失敗と試行錯誤を乗り越えて――「とまこまいコスプレフェスタ」立ち上げと再構築

――全国的にも珍しい「市街地やロケーション全域を活用する」コスプレイベントですが、立ち上げ当初はどのような苦労やドラマがあったのでしょうか?

永井: 実は「とまこまいコスプレフェスタ」は、洞爺湖のイベント(洞爺湖マンガ・アニメフェスタ)が始まってから2年後くらいに立ち上げたもので、全国的にもかなり早い段階から挑戦してきた歴史があります。

最初はとにかく「駅前商店街を活性化させよう」という想いで、地元の仲間や商店街の皆さんと一緒に手探りで始めました。当時はまだ市街地全体でコスプレイベントをやるなんて前例がほぼない時代です。足湯の裏の駐車場で千人鍋を作って豚汁を配ったりしながら、泥臭く盛り上げていきました。

――イベントが拡大していく中で、見えてきた課題もあったそうですね。

永井: はい。イベントが育っていく過程で、私が一度現場を離れた時期がありました。その際、運営のしやすさや集客の利便性を優先して大型商業施設などの屋内会場に軸足が移っていったことがあったんです。そうすると、当初目指していた駅前商店街との連携が薄れてしまったり、地域で協力してくれていた事業者さんやホテルとの距離が広がってしまったりして、「私たちが本来目指していた街巡り型のコスプレイベントとは違う方向に行っているのではないか」という危機感を抱きました。

だから現場に戻った時、一度立ち止まってイベント全体の方向性を再修正したんです。参加してくれるコスプレイヤーさんたちが本当に苫小牧のロケーションを楽しめるように、そして商店街や市街地の方々と再び二人三脚で作れる形へと再構築しました。

一度失敗や課題にぶつかったからこそ、「ただ人を集めればいいのではない」「地域の事業者や参加者の双方にとって価値のあるイベントとは何か」という原点をブレずに持ち続けられるようになりました。

TOMAKOMAI MIRAI FEST2026会場の様子(提供:TOMAKOMAI MIRAI FEST)

3. 大嵐も吹き飛ばす現場の熱量――「TOMAKOMAI MIRAI FEST」と広がるファン

――音楽・アート・食といったカルチャーと、苫小牧が目指す未来の環境取り組みや最新テクノロジーを融合させた「TOMAKOMAI MIRAI FEST(トマコマイ ミライ フェスト)」では、市外からも多くのスタッフが参加されています。多様な人を巻き込むチームづくりの秘密を教えてください

永井: ミライフェストもうまくいっている一番の理由は、各地から素晴らしいスタッフが集まってくれて、みんなが単なる「業務」としてではなく、地域の未来をつくる当事者として参加してくれているからです。

象徴的だったのは、去年の開催時ですね。台風並みの大嵐に見舞われて、普通なら安全面からも「本当に開催できるのか」という過酷な状況になりました。でも、行政や現場の裏方スタッフ、クリエイター陣が一体となって「何としてもやり切るぞ」「安全を確保しながら最高の時間を届けよう」という強い思い一つで動いてくれた。あの荒天の中で全員がひとつになって乗り切った体験は、何物にも代えがたいものでした。

裏で現場を支える一人ひとりが「自分たちがこの空間を作ったんだ」という強い当事者意識と誇りを持っている。そういう強いチームワークと熱量があるからこそ、イベントが終わった後も「また苫小牧に行きたい」「苫小牧のチームと一緒に仕事をしたい」と思ってもらえる持続的なファンや関係人口が生まれていくのだと思います。

4. 舞台美術と空間づくり――「演劇」が街に与える深み

――観光や大型イベントを牽引する一方で、長年「演劇集団『群’73』」の演出家としても活動されています。永井さんにとって「演劇・文化芸術」とはどういう存在ですか?

苫小牧市民参加演劇祭「四月になれば彼女は」出演メンバーと

永井: 演劇もイベントも、私の中では「空間を作り、人を惹きつける」という意味で繋がっています。

演劇の舞台を作るとき、例えば以前の舞台でも「命がけで桜の美術セットを作った」ことがありました。細部にまで情熱を注ぎ、本物の世界観を作り上げる。その妥協しない空間づくりの感覚が、そのままコスプレフェスタやミライフェストの現場にも活きているんです。

エンターテインメントや観光という華やかな要素に、演劇のような「文化・芸術」の深い文脈が掛け合わさることで、街には一朝一夕では作れないカルチャーや深みが生まれます。舞台の上で人間を描き続けてきたからこそ、イベントという現場でも「どうすれば人が感動し、街に愛着を持ってくれるか」が見えてくるのだと思っています。

5. これからの苫小牧へ――「未来は私たちがつくる」

――本日は永井様から、今後の“リレーションシップ”をより一層大切にしていきたいという熱いお気持ちをたくさん伺いました。最後に、これから苫小牧で新しいことに挑戦したいと考えている地域の事業者や若者、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

永井: 街を変えたり、新しいことを始めたりするときに、誰かがお膳立てしてくれるのを待つ必要はありません。行政も民間の事業者も関係なく、まず自分自身が「一番のプレイヤー」になって、やりたいことを本気で楽しむ姿勢が何より大切です。

立ち位置や形は変わっていくかもしれませんが、自分たちが現場で汗をかきながら作ったリアルな感動こそが、人を動かし、この街の未来を作っていくことに変わりはありません。

私自身もこれからもずっと一人のプレイヤーとして、そしてこの街を面白くしたい仲間の一人として、苫小牧という現場から面白い挑戦や空間づくりに関わり続けていきたいと思っています。

一人が起こす波紋が、やがて街全体を動かす大きなうねりへ――。 現場で汗をかき、自ら舵を切る「トマコマイシップな人々」が語る熱い言葉とリアリズム。

苫小牧の未来を面白くする航海は、まだ始まったばかりです。 次回はどんな仕掛け人が登場し、どんな未来を描いてくれるのか。第2弾の公開をお楽しみに!

ラジオ番組「トマコマイシップRADIO」は毎週金曜日、午後14時30分から放送中!
(再放送:毎週日曜日19時)
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この記事を書いた人
zoe

生まれも育ちも苫小牧の40代。イベントではハスカップをかぶっています。
苫小牧の街並みや昔の写真、地図を見るのが大好きです。
日々苫小牧の話題をリサーチして、皆さんの役に立ちそうな生活情報をお届けできるよう奮闘します!

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