
【はじめに】スポーツのある日常を、現場から支える
レッドイーグルス北海道との連携、市民がさまざまな競技に触れる「スポフェス」、そして名古屋グランパスのトレーニングキャンプ。スポーツ都市宣言60周年を迎えた苫小牧では、競技や立場を超えてスポーツに親しむ機会が広がっています。
その現場で、スポーツ団体との調整やイベントの運営を支えているのが、苫小牧市スポーツ推進課の石山さんです。大雨に見舞われたキャンプでは、選手たちの練習環境を整えるため、部署の仲間とともにグラウンドの水抜きにも奔走しました。
華やかな試合やイベントの裏側で、どのような工夫や連携が積み重ねられているのか。そして、苫小牧が誇るスポーツ環境を、子どもたちや市民の楽しみへどうつなげていくのか。ご自身もスポーツを続けてきた石山さんに、現場での経験と、これからの街への思いを伺いました。
1. プレイヤーとしての経験を、スポーツを支える仕事へ

――プロスポーツチームとの連携や数々のイベントを手掛ける中で、石山さんが一番大切にしている価値観は何ですか?
すごくシンプルなことですが、「自分自身が楽しむこと」ですね。
僕自身、ずっとスポーツを続けてきた人間なので、スポーツが本当に好きなんです。だからこそ今のスポーツ推進課に配属されて、プロスポーツやさまざまな大会に関わらせてもらっていること自体に大きなやりがいを感じています。
スポーツパーソンシップの原点って、やっぱり「まずは楽しむこと」にあると思っているんですよね。スポーツには「する」「見る」「支える」という多様な関わり方がありますが、そのすべてにおいて『楽しんでやる』という姿勢が根本にないと、何事も続いていかないと思うんです。何をするにしても、どんなスポーツに関わるにしても、自分自身が楽しめているかどうかが大切です。
高校野球をやっていた頃のような苦しい練習や厳しい環境から学んだことももちろんありますが、大人になって長くスポーツに関わり続けてきたからこそ、この「楽しむ姿勢」の大切さに改めて気づくことができました。自分たちが楽しまなければ、スポーツの本当の魅力を市民の皆さんへ伝えることはできません。だからこそ、日々の業務や企画に取り組む際も、まずは自分たちがワクワクして楽しめるかどうかを常に意識しています。
2. レッドイーグルスとの連携からスポフェスまで――節目の年に広げる接点
――今年は苫小牧市スポーツ都市宣言60周年という節目の年ですが、どのような取り組みを行っているのでしょうか?
今年一番最初の大きな取り組みとして、節目の年であることを広くアピールするために、ゴールデンウィークの少年野球大会でオープニングイベントを実施しました。そこを皮切りに、港まつりでは創部100周年を迎えたアイスホッケーチーム、レッドイーグルス北海道さんとコラボレーションしたオープニングイベントを開催したりと、例年以上にスポーツを前面に出していく企画を数多く展開しています。
また、10月12日には「スポフェス(スポーツフェスティバル)」も開催されたほか、例年実施している野球大会などに『スポーツ都市宣言60周年記念』という冠を付けて開催するなど、市民の皆さんに広くスポーツの魅力を届けるための工夫を凝らしてきました。年間を通してレッドイーグルスさんをはじめとするスポーツ団体や関係機関との窓口を務めつつ、スポーツ推進委員会の事務局業務や各種大会の運営など、幅広い事業に携わっています。
3. 大雨のグラウンドで動いた仲間たち――名古屋グランパスのキャンプを支えて

――今年7月に行われた名古屋グランパスのサッカーキャンプでは、運営や現場のサポートにも携わられたそうですね。
プロのトップチームと密接に関わり、そのプロフェッショナルな考え方や運営のノウハウを現場で学べたことは、自分にとっても部署にとっても本当に貴重で素晴らしい経験になりました。ただ、当日の現場対応は手探りの部分も多く、想像以上に泥臭い実務の連続でした(笑)。
今年の7月は雨が多くて天候に悩まされたんです。設営したテントの上に水が溜まってしまって崩れそうになったりと、現場での対応は大変な面が多々ありました。特に酷い大雨に見舞われた日には、グラウンドの状態が非常に心配される状況となり、朝早くから部署のメンバーと連絡を取り合ってすぐに現場へ駆けつけました。
「グランパスの選手たちに、少しでも良いコンディションで練習に臨んでほしい」という一心のもと、みんなで連携してグラウンドの水抜き作業やコンディション調整を行いました。行政の通常の枠組みを超えた手探りの対応ではありましたが、課の全員が同じ方向を向いて一丸となって動けたことが非常に強く印象に残っています。
後日、グランパスの担当者の方から「キャンプは大成功だった、ぜひまた来年も来たい」という言葉をいただけたと知った時は、現場で力を尽くして本当にお力になれて良かったと、心から大きな達成感とやりがいを感じました。
4. 挑戦が街に残したもの――スポーツを通じて生まれる一体感

――北海道日本ハムファイターズの二軍施設誘致に向けた取り組みを振り返って、街に残ったものは何だと感じていますか?
結果として誘致は叶いませんでしたが、市役所だけではなく、市民や企業、団体の皆さんが「苫小牧に二軍を呼ぼう」という一つの目標に向かって活動しました。その中で街に一体感が生まれたということは、紛れもない事実だと思っています。
――その一体感を感じた、具体的な取り組みを教えてください。
一つ挙げるとすれば、開幕戦のパブリックビューイングですね。商工会議所を中心に、民間の皆さんにも協力していただきながら取り組み、それが街の熱気につながりました。非常に価値のあるものだったと思っていますし、ありがたいと感じています。
行政だけでできることには限りがあります。民間の皆さんにも熱意を持っていただき、官民が一緒になって取り組めたという意味で、大きな出来事だったと思います。
――その経験を、今後どのようにつなげていきたいとお考えですか?
苫小牧市として、覚悟を持った提案はできたのではないかと思っています。ただ、それ以上に、街に生まれた熱気や、皆さんと一緒に取り組めたことは大きかったですね。
誘致が叶わなかったという結果だけで終わらせず、そこで生まれた一体感やつながりを、次の街づくりに活かしていけたらと思っています。
5. 恵まれた施設を、誰もが踏み出せる一歩へ――苫小牧のスポーツ環境
――苫小牧市は、全国的に見てもスポーツ施設や環境に恵まれている印象があります。
そうなんです。16万人を超える人口規模に対して、市内には体育館やスケート場、野球場、陸上競技場などを含めて17ものスポーツ施設が整備されています。
特にスケートリンクがあるのは他の街にはない圧倒的な強みですし、アイスホッケーやスピードスケートといった氷上スポーツが根付いているのは苫小牧ならではの素晴らしい文化です。また、気候的にも雪が非常に少ないため、近隣都市や札幌などではまだ屋外利用が難しい3月中旬頃から陸上競技場などが利用可能になります。春先になると、他の市町村からたくさんの団体や選手が練習や合宿に訪れてくれるのも、この地域が持つ大きな気候的アドバンテージです。
――誰もがスポーツを始めやすくするための取り組みも進められているのでしょうか。
例えば、道具の費用負担が大きいアイスホッケーにおいては、これから新しくスポーツを始める小学生向けに防具や用具の年間レンタル事業を進めています。道具を揃える経済的なハードルを下げることで、子どもたちがスポーツの一歩を踏み出しやすい環境を作りたいと考えています。
年齢や種目を問わず、誰もが無理なく、気軽にスポーツを楽しめるような環境づくりとサポートを、これからも柔軟に心がけていきたいです。
6. これからの苫小牧へ――市民とともにつくる、スポーツを楽しめる街
――最後に、市民の皆さんや地域の事業者さんへメッセージをお願いします。
苫小牧市は全国大会や世界大会で目覚ましい活躍を見せる選手やチームがたくさんいますし、スポーツイベントの開催数も他の街に比べて非常に盛んです。本格的に競技に打ち込む強さだけでなく、誰もがスポーツに親しめる土壌がこの街にはあります。
ぜひ市民の皆さんにも、そして地域の事業者さんにも、市内で開催されるさまざまなイベントやスポーツの場に気軽に参加していただいて、一緒にスポーツを楽しんでいただけたら嬉しいです。「スポーツを通して楽しかった」という体験を、市民の皆さんと一緒に作り上げていきたいと思っています。僕たち自身も一人のプレイヤーとして楽しみながら、皆さんがスポーツを楽しめる最高の環境づくりに取り組んでいきます!
【取材を終えて】
競技に打ち込む人、声援を送る人、舞台裏で支える人。石山さんのお話から伝わってきたのは、それぞれの立場を大切にしながら、スポーツを楽しめる場をともにつくっていく姿勢でした。プレイヤーとしての思いと、現場を支える責任。その両方を持つ石山さんの歩みに、「スポーツパーソンシップ」を感じます。
レッドイーグルス北海道との連携も、雨のグラウンドでの作業も、子どもたちが競技を始めるためのサポートも。その先にあるのは、誰かの「スポーツって楽しい」という瞬間です。人と人をつなぎ、その喜びを街に広げていく。そんな石山さんの仕事もまた、苫小牧の未来をつくる「トマコマイシップ」の一つなのではないでしょうか。
石山さんのお話は、FMとまこまい「トマコマイシップRADIO」でも放送されました。(毎週金曜日午後14時30分〜)
Spotifyでもアーカイブ配信をしていますので、ぜひお聴きくださいね!

